東京地方税理士会

セミナー 暮らしと税

所得税における同居家族への給与の支払い<令和元年12月>

 私は個人事業で美容院を経営し、毎年青色申告書を提出しています。今年から会社員である同居の長女に休みの日などに仕事を手伝ってもらっており、時間給でアルバイト代(給料)を支払っていますが必要経費にすることはできますか?

 結論から言いますと、娘さんに対するアルバイト代は必要経費にすることはできません。労務の対価として給料を支払い、必要経費にすることができるのは「青色事業専従者」の場合であり、要件は次のようになっています。
①青色申告の承認を受けている者と生計を一にする配偶者その他の親族であること
②その年の12月31日において年齢15歳以上の者であること
③その年を通じ、原則として6ヵ月を超える期間、青色申告の承認を受けている者の経営する事業にもっぱら従事する者であること

 お尋ねの場合、会社がお休みの時などに美容院を手伝ってもらっている程度の勤務状況であるため、娘さんの仕事への関わりは③の要件の「もっぱら従事」には該当せず、支払った金額は必要経費とすることはできません。
また、注意しておきたいのは③の「事業にもっぱら従事する期間」の考え方です。青色事業専従者の判定に当っては、相当の理由により事業主と生計を一にする親族としてその事業に従事することができなかった期間がある場合には、従事可能期間の2分の1を超える期間もっぱら事業に従事していれば足りるものとされています。相当の理由には、「病気で入院していた場合」、「他の会社への就職、退職」などが該当します。ですから、他の会社を退職したときから年末までを「従事可能期間」とし、その2分の1を超える期間もっぱら事業に従事している場合には、その期間に支払った給与は青色事業専従者給与として必要経費にすることができます。なお、青色申告の適用を受ける事業者は、上記①~③の要件を満たす者を新たに青色事業専従者とした日から2か月以内に「青色事業専従者に関する届出書」を所轄税務署に提出しなければなりません。この届出書の提出がない場合には給与を必要経費にすることはできませんので注意が必要です。

詳細につきましては、お近くの税理士にお気軽にご相談ください。

(東京地方税理士会山梨県会・飯島正樹)

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